「家族に会社の株式を譲りたいけど、どうすればいいんだろう」「相続税や贈与税はどれくらいかかるのか」と悩んでいませんか?
家族間での株式譲渡を誤ると、最大で評価額の55%もの税金を支払うことになりかねません。さらに、適切な方法を選ばなければ数百万円〜数千万円の損失を被るリスクがあるのです。
本記事では、株式譲渡の3つの方法と税金計算の仕組み、さらに多くの経営者が陥りがちな落とし穴まで徹底解説しています。今すぐ正しい知識を得なければ、将来的に取り返しのつかない判断をしてしまうかもしれません。
この記事を最後まで読むことで、後悔のない株式承継計画が立てられるはずです。
家族間での株式譲渡とは?
家族間での株式譲渡とは、親から子へ、配偶者間、または兄弟姉妹間で会社の株式の所有権を移転させる行為です。これは事業承継の一環として行われることが多く、経営権の世代交代や相続税対策として重要な役割を果たします。
株式譲渡は単なる資産の移転ではなく、会社の将来を左右する重大な意思決定です。計画的に進めなければ、想定外の税負担が発生したり、経営の混乱を招いたりする可能性があります。
株式譲渡の基本概要
株式譲渡の基本概要は、株式の所有者が変わることで会社の支配権や配当を受ける権利が移転する仕組みです。非上場企業の場合、株式の評価額は国税庁の定める方法に基づいて計算されます。株式譲渡の手続きは、以下の流れで進みます。
- 株式の評価額の算定(会社の財務状況に基づく)
- 譲渡契約書の作成(売買の場合)
- 株主名簿の書き換え
- 必要に応じた税務申告
株式を譲渡する際の課税関係は譲渡方法によって大きく異なります。生前贈与では贈与税、相続では相続税、売買では所得税(譲渡所得税)が課税対象となるため、それぞれの税率や特例を理解しておく必要があります。
家族間で株式を譲渡する3つの方法
家族間で株式を譲渡する方法は主に3つあります。
それぞれに税金面や手続きの違いがあるため、自分の状況に最適な方法を選ぶことが重要です。
相続
相続による株式譲渡は、株主の死亡後に法定相続人または遺言で指定された相続人に株式が引き継がれる方法です。この場合、相続税が課税対象となりますが、以下のような特徴があります。
- 事業承継税制の適用で最大100%の相続税が猶予・免除される可能性がある
- 遺言書がない場合は法定相続分に従って分割されるため、株式が分散するリスクがある
- 相続人間で争いが生じる可能性がある
事業承継を目的とする場合は、遺言書で後継者に株式を集中させることや、生前に株主間協定を結んでおくことが重要です。また、相続税の納税資金を確保するために、生命保険の活用も検討すべきでしょう。
生前贈与
生前贈与は、株主が生きている間に家族に株式を無償で譲る方法です。計画的な事業承継を進める上で有効な手段ですが、贈与税が課税される点に注意が必要です。生前贈与の主な特徴は以下の通りです。
- 年間110万円までの基礎控除があり、計画的に行えば税負担を分散できる
- 相続時精算課税制度を選択すれば2,500万円まで非課税枠が使える
- 贈与契約書の作成や株主名簿の書き換えなどの手続きが必要
特に相続時精算課税制度は60歳以上の親から18歳以上の子への贈与に適用でき、将来の相続税と一体で考えられるメリットがあります。ただし、株価が上昇している会社では、早めに贈与を行った方が税負担を抑えられる可能性が高いでしょう。
売買
売買による株式譲渡は、適正な価格で家族間で株式を売買する方法です。この方法の最大の特徴は、譲渡する側には譲渡所得税が、購入する側には資金が必要になることです。家族間売買の主なポイントは以下の通りです。
- 適正価格での取引が必要(著しく安い価格では贈与税の対象になる可能性あり)
- 譲渡側に譲渡所得税が課されるが、取得費や特例を活用して軽減可能
- 買い手側は購入資金を準備する必要がある(金融機関からの借入なども検討)
売買は、譲渡側が現金化できるメリットがありますが、後継者が多額の資金を用意する必要があります。そのため、株式の分割払いや従業員持株会の活用などの工夫も検討すべきでしょう。
家族間の株式譲渡で発生する税金
家族間の株式譲渡では、譲渡方法によって異なる税金が発生します。適切な方法を選ばなければ、想定以上の税負担が生じることもあるため注意が必要です。相続では相続税、贈与では贈与税、売買では譲渡所得税がそれぞれ課税されます。税金対策を誤ると、最悪の場合、株式を手放して納税資金を確保しなければならない事態にもなりかねません。
相続税の計算方法と軽減策
相続税の計算方法は、まず株式の評価額を含む相続財産の総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を差し引き、課税対象額を算出します。
その後、法定相続分に応じて各相続人の税額を計算し、税率(10%~55%の累進税率)を適用します。相続税の軽減策としては以下のものがあります。
- 事業承継税制
-
売り手の株主が持つ株式を買い手企業に売却し、会社を丸ごと売却する手法です。
- 小規模宅地等の特例
-
事業用地や居住用地の評価額が最大80%減額される
- 配偶者の税額軽減
-
配偶者が取得した財産のうち1億6,000万円または法定相続分までは非課税
特に事業承継税制は、2018年の改正で特例措置が拡充され、10年以内(2027年3月31日まで)に特例承継計画を提出すれば、より有利な条件で適用を受けられるようになりました。
贈与税の計算方法と相続時精算課税制度
贈与税の計算方法は、1年間(1月1日~12月31日)に贈与された財産の価額から基礎控除額110万円を差し引き、その金額に税率(10%~55%の累進税率)を適用します。一般的な暦年課税と相続時精算課税制度の比較は以下の通りです。
区分 | 暦年課税 | 相続時精算課税制度 |
---|---|---|
非課税枠 | 年間110万円 | 累計2,500万円まで |
税率 | 10%~55%(累進税率) | 一律20% |
相続との関係 | 相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算 | 生前贈与額を相続財産に加算 |
適用条件 | なし | 贈与者60歳以上、受贈者18歳以上の直系卑属 |
相続時精算課税制度は一度選択すると変更できないため注意が必要ですが、2,500万円までの非課税枠が大きいメリットがあります。
譲渡所得税と株式売却時の税金計算
譲渡所得税は、株式を売却した際の利益(譲渡価額-取得費-譲渡費用)に対して課税されます。個人が株式を売却した場合、一般的に申告分離課税となり、以下のような計算方法で課税されます。
- 譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
- 税率
-
所有期間5年以下(短期)…39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
- 税率
-
所有期間5年超(長期)…20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
非上場株式の譲渡には、特例として特定事業用資産の買換え特例や特定同族会社株式等に係る相続税の納税猶予特例との併用で、事業承継を税制面で支援する制度があります。
家族間の株式譲渡で注意すべきポイント
家族間の株式譲渡では、税金面だけでなく様々なリスクや注意点があります。株式譲渡は単なる資産移転ではなく、会社の経営権や将来の方向性にも関わる重要な決断です。
適切な準備と検討なしに進めると、家族間での争いや会社経営の混乱を招くこともあります。また、税務上の観点からも、不適切な手続きや不明確な価格設定は、税務調査のリスクを高めます。
株価を算定してもらう必要がある
非上場株式の価値を正確に把握するためには、専門家による株価算定が不可欠です。株価算定は以下の理由から重要となります。
- 適正な譲渡価格の設定ができ、贈与税や相続税の追徴リスクを回避できる
- 将来の税務調査に対応するための根拠資料となる
- 関係者間で株式の価値について共通認識を持つことができる
株価算定の方法としては、国税庁の定める評価方法(原則的評価方法と特例的評価方法)に基づいて行われます。主な評価方法は以下の通りです。
評価方法 | 成功報酬の料金比率 | 概要 |
---|---|---|
類似業種比準方式 | 大会社 | 上場企業の株価から類推して評価 |
純資産価額方式 | 小会社 | 会社の純資産を基に評価 |
折衷方式 | 中会社 | 上記2方式の折衷 |
株価算定は専門性が高いため、税理士や公認会計士などの専門家に依頼することをおすすめします。
安い金額で売買すると贈与税が課されることもある
家族間で株式を時価よりも著しく低い金額で売買すると、その差額部分に贈与税が課される可能性があります。
これは「低額譲渡」と呼ばれ、税務上では部分的に贈与があったとみなされます。具体的には以下のようなリスクがあります。
- 時価の70%未満の価格での取引は、贈与税の課税対象となりやすい
- 株価算定の根拠が不明確だと、税務調査の際に追徴課税されるリスクがある
- 親族間取引は税務署から特に注目される傾向がある
このリスクを回避するためには、第三者の専門家による適正な株価算定を行い、その証明書を保管することや、取引の経緯や価格設定の根拠を文書で残しておくことが有効です。
後継者は株式を買い取るための資金が必要
家族間で株式を売買する場合、後継者は相応の資金を準備する必要があります。特に会社規模が大きい場合、必要資金は数千万円から数億円に達することもあります。資金調達方法としては以下のような選択肢があります。
- 金融機関からの借入(事業承継向けの特別融資制度の活用)
- 経営承継円滑化法による信用保証制度の利用
- 分割払いによる段階的な株式取得
- 従業員持株会を活用した株式の分散保有
後継者の資金負担を軽減するための工夫としては、株式の分割贈与や役員報酬の増額、会社による自己株式取得なども検討できます。資金計画は早期に立て、計画的に準備を進めることが重要です。
まとめ
家族間での株式譲渡は、慎重に計画し実行すべき重要な経営判断です。
本記事でご紹介した3つの譲渡方法(相続、生前贈与、売買)それぞれに税制上のメリット・デメリットがあり、自社の状況や後継者の資金力に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。
特に注意すべきポイントとして、適正な株価算定を行うこと、税金対策を徹底すること、そして後継者の資金計画を立てることが挙げられます。
株式譲渡は短期的な税負担だけでなく、会社の将来にも大きく影響する決断です。早期に専門家(税理士・弁護士)に相談し、計画的に進めることをおすすめします。
